22日



 今日思ったけど、町は老人たちのひとり言やうめき声に満ちている。商店でも、電車でも、喫茶店でも、老人たちは相手がいようがいまいが何か一方的な発語をしている。非常に回転の遅い論理、呑み込めない状況、なかなか前進しない事態。夫婦で同じ商品を見ていたのに、旦那のほうがふらふらと離れていって、「そこにいる」と思って品物についてごちゃごちゃ言ってる奥さんは、完全に俺に同意を求める感じになってる。いや、同意を求めるわけでもない。ただ意味の不明瞭な言葉をぶつけてくる。言葉によって世界を確かめてる。つぶやくという感じではない、もっと力強い発語。老人。みんなそれになんとなく注意を向けている。あれはただの老化。されど老化。スタンドプレーヤーたちの絶妙な共存。足首が冷える小雨の一日。