2010-07-16 16日(金) 横切る自転車のベルや遠ざかっていく自動車のエンジン音や、空き缶が地面に落ちる音。 そしてその合間にも自分の足音はまばらなリズムでその人の耳と体に響いた。 幾度も適当に角を曲がったり信号を渡ったりした後で、その人はメープルシロップの匂いを嗅いだ。 住宅街はそのとき非常に静かで、でも散歩中の犬が、ヲンヲン吠えた。 (大江くんの卒論/小説『品』)