8日


 処分される寸前の『寄生獣』全10巻を譲り受け、数日かけてじっくり読んだ。すごい漫画だった! これをリアルタイム(小5?)で読んでた彼女もすごいな・・・。いまさら絶賛するのも恥ずかしいけど以下、かんたんな感想。まず全体としてストーリーの展開に強い説得力がある。いっさい脇目もふらずに突き進んでいる、でもその行先が分からない感じがすごい。しかも、その進み方は直線的というより、大きくループしてる感じがする。この物語性は、離れようと移動しているのに、常に回帰してくるような、主人公の移動の仕方と関係があると思う。主人公の新一は、何度も逃げ出し、あるいは追いかけ、帰ってくる。その移動がこの物語世界の複層的な再帰性を支えている、というような。また、派手な戦闘(殺戮)シーンが多いのに、ありがちなスカッとする感じとかカタルシスは皆無で、常に「いやな感じ」「厭戦感」が漂っているのも不思議な魅力の一つ。そしてエコロジー思想が物語の入り口と出口でありながら、ストーリーに繰り返しあらわれるテーマは人間の「親」と「子」の関係性の物語であるという、何ともいえない二重性がある。そう、この漫画は本当に、「何ともいえない」。これは漫画や小説への最高の褒め言葉だと思う。読んでいて中盤まではずっと、ナボコフの「出産とは病気にほかならない、そして、子というものは、親の肉体の〈外部化し〉独立した腫瘍であり、それはしばしば悪性のものである」という言葉を連想していた。というわけで、胎教に『寄生獣』、どうでしょうか。きっと胎児と一緒にドキドキできます。