22日



 エマニュエル・ボーヴ『のけ者』(渋谷豊訳、白水社)を読み終わる。
 すごい。「この人がダメなら、あの人に助けてもらったら・・・」とか、
 「やっぱり身を粉にして働きなよ」とか、読者もたくさんの登場人物たちと共にそう思い、
 主人公のニコラやルイーズと一緒にちょっとずつ孤立し、執拗なまでの丁寧な語りで、
 居場所を奪われ、すり減らされていく。それが直接、誰のせいでもないのが恐ろしくて、
 物語上、「誰か/何かのせいである」という提示がされていれば、読者は挽回や復讐という目的に安心できる。
 最後までそれを許さないボーヴの情熱って一体・・・。ルサンチマンでも残酷趣味でもない。
 しかも不条理でもなく、社会的な疎外とも言いがたく、転落でもない。
 「市民社会」はここでは敵でも味方でも謎でもない。いくつか可能性はあったけど、手からすべり落ちた。
 これってどういう種類の感動?&しっかり身につまされた。